☆天体望遠鏡の基礎知識

天体望遠鏡といっても、色々な種類の望遠鏡があります。
主に、屈折式と反射式があります。また、架台も経緯台式と赤道儀式があります。
屈折式望遠鏡で各部の名前を覚えましょう。

@対物レンズ枠
これで光を集めて像を作る。2枚以上のレンズが組み合わせてあります。

A鏡筒(きょうとう)
望遠鏡の筒の部分。

B架台(かだい)
鏡筒を支えて上下、左右方向に動かす部分。

Cファインダー
倍率が5倍程の小さな望遠鏡。まずこれをのぞいて十字線の真ん中に星を捉えます。

Dピント調整ハンドル(フォーカスノブ)
これを回してピントを合せます。

E接眼レンズ(アイピース)
これを接眼部に差し込まないと見えません。

F微動ハンドル
望遠鏡の向きを微調整する。

G天頂ミラー(天頂プリズム)
光を直角に曲げて天頂付近の星を見やすくするアクセサリーです。

Hアクセサリー台
接眼レンズなど小物パーツ置く台。

I三脚

望遠鏡を支える足。伸び縮みして高さを調整できる

☆望遠鏡用語解説

●倍率

望遠鏡の倍率は対物レンズ/主鏡の焦点距離を接眼レンズの焦点距離で割ることで求められます。
例えば、焦点距離900mmの望遠鏡で20mmの接眼レンズを使用した場合、900÷20=45(倍)となります。

●対物レンズ/主鏡有効径(口径)

対物レンズや主鏡の実際に使われている部分の大きさを直径で表したものです。
有効径が大きいほど光をたくさん集めることができ、明るい視野を得ることが可能です。
星雲や星団などの暗い天体を観測する際はなるべく有効径の大きい望遠鏡をおすすめします。

●焦点距離

対物レンズの中心または主鏡の中心から像を結ぶ焦点までの長さを焦点距離と言います。

●口径比

焦点距離を対物を対物レンズ/主鏡有効径で割ったもので、1:15のように表されます。
数値が小さくなるほどの明るいレンズであることを表します。

●極限等級

どれくらい暗い星まで見えるかを表したものを極限等級といいます。
肉眼での極限等級は6.5等星くらいまで(光害は考えない)で、望遠鏡では
対物レンズ/主鏡有効径が大きくなるほど暗い星まで見ることができます。

●集光力

肉眼に比べて何倍の光を集めることができるかを示したものです。
対物レンズ/主鏡有効径が大きくなるほど暗い星まで見えるようになります。

●分解能

二つの接近したものを見分ける能力です。 分解能は1.16"÷対物レンズ/主鏡有効径(mm)の式で
求められます。例えば対物レンズ/主鏡有効径が100mmのときはこの式より分解能は1.16"となりますが、
これは4km先にある1円玉の大きさに相当しますから、非常に細かいものを見分けられることがわかります。

☆天体望遠鏡の鏡筒の種類

レンズや鏡を使って天体からの光を集め、接眼レンズで拡大して人の目に映るようにしてくれるいわば
天体望遠鏡の本体ともいえる部分です。

対物レンズ(主鏡)の有効径が大きいほど多くの光を集めることができ、
淡く見づらい天体も良く見えるようになります。

屈折式

対物レンズで集めた光を直接接眼レンズで拡大して見る形式です。光路が単純なだけにコントラストも良く、視界全体に落ち着いた良像を結びます。またメンテナンスも簡単で、初心者にも簡単に扱えます。観測対象はオールマイティーです。対物にアクロマートレンズを使ったものは若干色収差が残ります。EDレンズなどの高級素材を使ったアポクロマートレンズは極限の収差補正が可能ですが口径の割に高価です。

反射式

光を集めて像を作るために、ガラスの表面をメッキした反射鏡(凹面鏡)を使用した天体望遠鏡です。ニュートン式(反射式)は凹面鏡(主鏡)からの光を光軸に対し45°の角度に置いた平面鏡(斜鏡)で90°曲げて像を作り、これを接眼レンズで観察するもので、色収差がなく、視界中心部は極めてシャープな像が得られます。月面、惑星、星雲、星団観測に向き、天体写真撮影にも適してします。急激な温度変化が生じると筒内気流の影響で像が安定するまで若干時間が掛かります。またベストコンディションを保つためには定期的なメインテナンスが必要になります。

カタディオプトリック式

屈折式と反射式の要素を組み合わせた望遠鏡です。鏡筒を短くすることができるため、大口径望遠鏡もコンパクトに作ることができ、野外での機動性が良好です。また見かけより焦点距離がはるかに長いため高倍率での観測にも向きます。口径が大きいほど、急激な温度変化で筒内気流の影響が出やすく、像の安定には少々時間が掛かります。各収差は補正レンズ等で良く抑えられています。

☆架台は経緯台式と赤道儀式

架台とは鏡筒を支えて望遠鏡を見たい方向に固定する部分です。
経緯台式と赤道儀式の2種類あります。小さな天体を見るには、微妙な揺れも見え方にとても
影響してくるのでしっかりしたものをお薦めします。  

 

経緯台

経緯台式では星の動きに対して左右、上下の2方向へ望遠鏡を動かすことができます。 操作が簡単ですので、はじめて天体望遠鏡をご使用になる方をはじめ、学習用としても最適です。

赤道儀

赤道儀式では星の動きに対して赤経ハンドルひとつの操作で星を捉えつづけることができます。 長時間の観測、写真撮影に最適ですが、使用前に極軸のセッティングが必要です。 また、モータードライブの使用による完全自動化が行え(取付可能機種に限る)、初心者から上級までレベルに応じたシステムアップが可能です。

☆接眼レンズ(アイピース)と倍率

対物レンズとともに、なくてはならないのが接眼レンズ。
接眼レンズを望遠鏡の覗き口に取り付けないと何も見えません。
倍率を換えるには、接眼レンズを交換して倍率を換えます。
普通は1本〜3本の接眼レンズが付属しています。
もちろん後から買い足すこともできますので低倍率・中倍率・高倍率の3種類そろえておくとよいでしょう。

望遠鏡の倍率は、つぎの式で計算することができます。

倍率=対物レンズの焦点距離÷接眼レンズの焦点距離

つまり対物レンズの焦点距離が長いほど、接眼レンズの焦点距離が短いほど倍率が高くなります。
接眼レンズの焦点距離は、2.5mm〜56mmぐらいの間でいろいろな長さのものが用意されています。
接眼レンズを付け替えることで高倍率にも低倍率にもできますが、望遠鏡には適正最高倍率があります。

適正最高倍率=対物レンズの有効径(mm)×2

たとえば口径80mmなら、適正最高倍率は160倍ということになります。
これ以上倍率をあげても、像が暗くなりボケて見にくくなります。

下記の表に対象天体ごとの適正倍率表を参考にしてください。

双眼鏡
7〜10倍
口径60mm
分解能1.9秒
口径80mm
分解能1.5秒
口径100mm
分解能1.2秒
口径150mm
分解能0.8秒
月の全景 50〜100倍
谷やクレーターの細部
50〜150倍
海の起伏や谷の詳細
50〜180倍
かなり詳しく観測できます
50〜250倍
小クレーターも良く観察可能
水星 位置確認 100倍
水星の形がわかります
100倍
淡い模様が分かります
100〜150倍
淡い模様が分かります
100〜200倍
模様の様子が分かります
金星 位置確認 50〜100倍
三ケ月と半月の区別ができます
100〜150倍
形の変化が良く分かります
100〜150倍
形の変化や淡い模様の確認
100〜250倍
形の変化や模様の観察ができます
火星 位置確認 50〜100倍
極冠や大きな模様が分かります
100〜150倍
極冠や主な模様の観測が可能
100〜150倍
極冠の変化が確認できます
100〜200倍
本体の模様と太い運河が確認可能です
木星 衛星の確認 50〜100倍
3本以上の縞と衛星の観察
100〜150倍
大赤班が分かり衛星の影も確認
100〜180倍
縞の細部を見ることができます
100〜250倍
縞の細部を観察することが可能
土星 位置確認 50〜100倍
リングや模様,衛星チタンの確認
100〜150倍
リングの角度によりカシニの溝確認
100〜150倍
カシニの溝確認と他の衛星確認
100〜250倍
リングの溝、本体模様、衛星数個の観察
星雲・星団 主な星雲
星団観望
〜50倍
同左
50倍〜
メシエ番号のついたほとんどの星雲星団の観望
50倍〜
主な球状星団が高倍率で星に分解して見える
50倍〜
星雲・星団がはっきりと雄大に美しく見える

●表中以外にも、アルビレオ、ミザールなどの有名な重星や極大光度8等星以上の変光星など低倍率で美しく観測できます。
また彗星や流星群などは双眼鏡を使うと楽しく観望できます。
●この表の倍率は、有効径の大きさから決めた、一番見やすい倍率です。
見え方については、周囲の状況や天候そして大気の状態により大きく左右されます。
●表中火星の見え方表現は2年ごとに訪れる接近時を基準としています。

☆適正倍率と過剰倍率

冒頭でもご説明したようにその望遠鏡に合った見やすい倍率というものがあります。
おおむね口径の半分の倍率がその望遠鏡の最低倍率、口径と同じ倍率が中倍率、口径を2倍した
倍率がその望遠鏡の最高倍率と覚えておいてください。
口径80ミリの望遠鏡でしたら40倍程度が低倍率、70倍前後が中倍率、
160倍が最高倍率ということになります。
過剰に倍率を上げ過ぎると視界は暗くなり解像も悪くなってしまいますのでご注意ください。
下に見え方のイメージを記載しますので参考にしてください。

 

☆接眼レンズとピント合わせ

望遠鏡で像を見るために

鏡筒先端のキャップをはずし、天頂プリズムと接眼レンズを差し込んで、固定ネジをしめて固定します。この接眼レンズを差し替えることによって、倍率を換えることができます。はじめは倍率の低い接眼レンズを使いましょう。

ピントを合わせよう

望遠鏡に接眼レンズを取り付けただけでは像は見えません。フォーカスノブ(ピントノブ)を回転させてピントを合わせる必要があります。(フォーカスノブを回転させるとドローチューブが伸び縮みします)昼間の地上風景でピント合わせの練習をしましょう。

☆ファインダーの調整

倍率の高い望遠鏡では、見える範囲が非常に狭いので、目標物を捉えるのが大変です。
そのためファインダーという広視界の小型望遠鏡を使って、目標物を捉えます。
この時、ファインダーと望遠鏡本体とが正確に同じ方向を向いていないといけません。
つぎの手順で調整しましょう。

1、望遠鏡を組み立てた後、低倍率の接眼レンズを取り付けます。

2、水平ロック、上下ロックをゆるめます。

3、望遠鏡をのぞきながら、300メートル以上離れた地上風景を(電柱の先端、アンテナ等がよいでしょう)

望遠鏡の真ん中に入れてピントを合わせます。水平ロック、上下ロックをしっかり締めて固定します。

4、ファインダーをのぞきながらファインダーブラケットの調整ネジをゆるめたり、しめたりして望遠鏡本体のに見えている地上物がファインダーの十字線の中央に来るよう調整します。

調整後ファインダー調整ネジをしめすぎないようにしてください。

望遠鏡の本体でのぞいた状態視野が狭いです。

望遠鏡によって、ファインダーブラケットが違います。
画像Aは調整ネジが3本タイプです。画像Bは調整ネジが6本タイプです。

ファインダーをのぞきながら調整ネジをまわして、望遠鏡の視野の中心にある目標物を十字線の交点に近づけます。

操作を繰り返して、十字線の交点にピッタリ合わせます。

☆天体望遠鏡の倒立像について

天体望遠鏡はミラーやプリズムを複雑に組み合わせると、見たとおりの正立像が得られます。
しかし、レンズやプリズムの透過や反射で、光の損失やレンズの誤差が大きくなります。
天体望遠鏡では淡い天体の光を見るので、光の損失や光学的な誤差をできるだけ抑えるために、
誤差が少なく複雑な光学系を必要としない設計をします。
宇宙空間では上下という区別はできないので天体を見るにはまったく問題ありません。

☆天体や風景を見てみよう

目標物を捕らえる

鏡筒のレンズキャップを外し、接眼レンズを取り付けて、像を見ることができるようにしておきます。
はじめは倍率の低い接眼レンズを取り付けてください。
望遠鏡の本体を上下、左右に動かして向けたい方向に動かします。
ファインダーをのぞきながら望遠鏡を動かして見たいものがファインダーの中に入ったらファインダーの
十字線の真ん中に見たいものがくるように、上下微動装置と水平回転で調整します。

望遠鏡のピントを合わせる

ファインダーの調整が正しく行われていれば、望遠鏡の接眼レンズをのぞくとねらった目標が望遠鏡の中に入っているはずです。
ピントが合っていないと何も見えない場合があります。
フォーカスノブ(ピントノブ)を回してピントを合わせましょう。
時計方向に回すとより遠景に、反時計回りに回すとより近景にピントが合います。
接眼レンズをのぞきながらもっとも像がシャープに見えるところがピントの合っているところです。

フォーカスノブ(ピントノブ)を回して、像がさらにぼやけてしまう場合、フォーカスノブを反対方向に回します。
あまり近い場所にはピンとは合いません。


光学系の検査方法に関するご注意

レンズやミラーを懐中電灯などで鏡筒内部を照らして検査するのは適当と言えません。

ライトを当てて見ると、ミラー等に光が反射して肉眼では見られないようなわずかなキズなどが誇張されます。

小さな研磨痕やキズなどは光学性能に影響しませんのでご安心ください。

また、埃等が多少付着していても光学性能に大きな影響を及ぼすことはありません。

望遠鏡の種類によっては外気順応のためセル部分等に隙間などを設けているものもあります。

この隙間から埃等が鏡筒内に浸入しやすい構造になっている光学系もあります。

この為、輸送時等に鏡筒内に多少の埃等が付着する場合がありますが光学性能にほとんど影響を及ぼすことはありません。